商談を成功へと導くための「8つの応酬話法」

ここでは、実際の商談の場面で使える8つの応酬話法を、具体例を交えながら紹介します。

お客さまの発言への切り返しの言葉とその使い方を、まずは読んでみてください。

そして紹介する言葉のあとに続く、説得力のある理由や根拠について、どのような心の動きに対して

働きかけているかも示しています。

ぜひあなたの商談でもすぐに実践してみてください。

 

 応酬話法1.肯定法(バックトラッキング)

お客さまの発言や断わりの言葉をそのまま受け止めて、

それを深化・発展させる方向でこちらの主張につなげていくことで、お客さまの共感が得やすくなる応酬話法です。

「おっしゃる通り、〇〇ですよね。ですからこそ…」という入り方から展開します。

「〇〇ですよね」の部分には、「要らない」「余裕がない」「今は難しい」といった、
お客さまが発した断わりの理由にあたる言葉をそのまま入れて繰り返します。

上記のように相手の言葉を繰り返すことで、
お客さまの中に「しっかり話を聞いてくれている」「自分を肯定してくれている」など、肯定的な気持ちが生まれます。
これにより営業担当者の言葉は受け入れられやすくなります。

その上で「ですからこそ」というキーワードを使い、相手の言葉に沿った上での、
商品をおすすめする理由を述べます。

【応酬話法の例】

お客さま:「住宅ローンの返済で手一杯で、積立て預金をする余裕はないよ。」

営業担当者:「そうですね。最近はどこのお宅も、住宅ローンのご返済があって余裕がないとよくおっしゃいます。

そのような状況ですからこそ、将来の住宅メンテナンスやリフォームの費用に備えて、ご返済と並行してお手軽な金額で計画的な貯蓄をおすすめしております。」

 応酬話法2.イエス・バット法(逆転法)

お客さまの発言や断わりの言葉をそのまま受け止めてから、

それに反するこちらの主張を述べることで、お客さまの抵抗感を和らげる応酬話法です。

 

「おっしゃる通りです。しかし…」などと展開します。

「ただ、…」「ですが、…」これらの言葉も使えます。

相手の意見を正面からしっかり受け止めることで、お客さまの中に

「私の話をしっかり理解し、受け止めてくれている」という承認された気持ちが生まれます。

 

その上で反論に転じていくため、お客さまが感じる心理的抵抗感が少なくなり、会話を続けることができます。

一見、肯定法と同じように思われますが、異なる点は、断わりの言葉を深化発展させるのではなく、

対案を示して攻めのセールスに転じる、という点です。

 

とはいえ、肯定したあとに異論を述べるので、全否定するような言い方や表現にならないよう注意が必要です。

この話法は、相手の表情をよく観察しながら使いましょう。

 

【応酬話法の例】

お客さま:「既に〇〇社と取引しているので、これ以上取引先を増やす必要はないね。」

営業担当者:「〇〇社さんは大手で信用もありますし、お取引も申し分ないですよね。私どもはまだまだ小規模で、〇〇社さんを目標に頑張っているところです。

しかし私どもは、地元優先・地元と共に栄えることをモットーとして、足まめな営業活動を特徴としておりまして、多くのお客さまに重宝していただいています。」

 応酬話法3.イエス・アンド法

お客さまの発言や断わりの言葉をそのまま受け止め、それに反するこちらの主張を述べていきます。

述べるときの言葉を順接の言葉でつなぐことで、お客さまに冷静に聞いてもらいやすくなる応酬話法です。

 

「おっしゃる通りです。それであれば…」というように展開します。

「では」「したがって」「一方で」などの言葉も使えます。

相手の意見を受け止めた上で、「それであれば」「では」「したがって」「一方で」など、反発が生まれにくい言葉でつなぎ、お客様にとってのメリットを提案します。

 

そのため、イエス・バット法よりも柔らかい印象となり、

お客さまの中に「これは私のための話だ」と肯定的な気持ちが生まれ、前向きなやりとりを行いやすくなります。

【応酬話法の例】

お客さま:「A商品は、値段はいいけど、見た目が今一つなんですよね。」

営業担当者:「確かに、A商品はタッチパネルじゃなくてボタン式ですので、古い印象がありますよね。ボタン式は、古いように見えますが、標準的で今後も変わらないものです。

一方で、タッチパネルはこれからどんどん変わっていくので、もしかしたら今出ているものが、すぐに古く見えるようになるかもしれません。」

 応酬話法4.否定法(正面撃退法)

お客さまに理解不足や疑問がありそうなとき、お客さまの発言や断わりをきっぱりと否定することで、

正しく理解して安心していただく応酬話法です。

 

「そんなことはございません」

「そのようなご心配は必要ありません」

といった言葉で、相手の意見を否定して展開します。

商談がある程度すすんだところで、お客さまの理解不足や誤解があると感じたときや、疑

問や不安を解消したりするときに使うことができます。

 

この時「ご安心ください」「大丈夫です」などの言葉も添えると、柔らかい印象になります。

お客様の意識が「安心していい」「大丈夫なんだ」という方向に向くため、

否定した言葉が「自分のための話だ」と受けいれられやすくなります。

 

もちろん、お客さまの発言を否定するというのは勇気がいることですが、

相手の「気持ち」を否定するのではなく「物事」を否定することで、

相手の人間性を拒絶しているわけではない。ということを明確にすることがポイントです。

 

注意点としては、言い方を柔らかくしないと、強引な雰囲気が出たり、

押し問答型に発展したりする恐れがあるので、気をつけましょう。

【応酬話法の例】

お客さま:「あると便利だとは思うけれど…。でも、買うとまた何度もセールスの電話がかかってきたりするんでしょう。」

営業担当者:「奥さま、そのようなご心配は必要ございませんので、ご安心ください。消耗部品のご購入や修理のご相談など、お客さまが必要なときに、ここに書いてある電話番号にかけていただくのみです。

私どもからのセールスは今後いたしませんので、どうぞご安心ください。」

 

 応酬話法5.黙殺法(聞き流し法)

お客さまのにべもない断わりの言葉を軽く聞き流して、話題を切り換えることで、

お客さまとの会話を続けることができる応酬話法です。

 

「ところで…」

「そういえば…」

などの言葉を折り込み展開します。

 

黙殺法は、お客さまからなかなかニーズが聞き出せないときや、

門前払いで聞く耳を持っていただけないときに使うと、お互いの気詰まりが解消されて便利な話法ですが、

以下の点で注意が必要です。

 

1.多用しない

黙殺法を多用すると、話が平板に推移して散漫になったり、お客さまからは「私の話を聞いてくれていない」とセールスへの不満がつのったり、不誠実な印象を与えてしまうなど、心証が悪くなる場合があるので気をつけましょう。沈黙は金、という上手な使い方につなげると効果的です。

 

2.無意識に黙殺しない

とかく商談のなりゆきが思わしくないと、「黙殺法」をくり出し、文字通りに「お客さまの言うことをはぐらかす」「無視する」トークをしていませんか?

自分では気づかずに、お客さまの話すことを黙殺するケースは意外と多いものです。

 

【応酬話法の例】

お客さま:「今は、人手は足りていますから、人材の募集はしなくても大丈夫です。」

営業担当者:「…。ところで〇〇さまは、こちらの職場にいらして何年になるのですか?」

 

 

 応酬話法6.例話法(引用法)

目の前の営業担当者を信用しきれない、もしくは商品を買おうか迷っている、

といった状況のお客さまに対し、別のお客さまの取引事例などを紹介します。

それにより、お客さまの気持ちを購入・契約に向け、前向きしやすくなる応酬話法です。

 

「例えば、ご同業の企業様で、〇〇をご利用いただいております」

など、「例えば」「実は」という言葉を使い展開します。

 

例話法は、商談のどの段階でも使うことができ、便利な話法です。

商談の序盤では、取引実績を示すことでこちらへの信用を増すことができますし、

終盤では、決断を迷っているお客さまの背中を押すなどの効果があります。

 

例えば、取引に前例がないことに抵抗感を示すお客さまが、第三者の新規取引成功事例などを耳にすると、

安心することができます。目の前のお客さまとの共通点が多い実例ほど、効果的です。

 

競争心に火をつけ、「それではわが社も」という流れに持っていくことも期待できます。

事例だけではなく、体験談、事実、計数、統計などもここには含めてよいでしょう。

注意点としては、守秘義務の順守や個人情報の保護には留意しましょう。

 

【応酬話法の例】

お客さま:「うちは売上が月によってだいぶ違うから、毎月決まった保険料を払うのは厳しいなあ。」

営業担当者:「そうですか…。実は、昨年の春先に、同業の社長さんがまったく同じことをおっしゃいながら、この保険を始められました。早いものでもう一年が経ちましたが、変わらずお支払いをご継続されていらっしゃいますよ。」

 

 応酬話法7.資料転換法

口頭の説明だけではお客さまが理解しづらそうだと感じたときや、会話が行き詰まったときなどに、資

料やデータなどを見せます。そうすることで、お客さまの納得を得やすくなる応酬話法です。

 

「ちょっとこちらを見ていただけますか」

「この資料のここをご覧ください」

などの言葉を使い展開します。

 

耳で聞くだけでなく目で追える資料があることで、初めて説明を聞いたお客さまにとっては、

情報が頭に入りやすくなります。

 

商品購入への動機を刺激した上、「〇〇円もコストが安くなるなら…」「〇個もメリットがあるなら…」と、

具体的な判断根拠をお客さまに提供することができます。

 

また、相手の注意を資料のほうへ誘うので、読んでいただいている間にこちらは考える時間が持て、

絶句のピンチを乗り切ることもできます。

 

【応酬話法の例】

お客さま:「ええと…、結局、何割くらい売上が上がるんですか?」

営業担当者::「ちょっとこちらの資料をご覧いただけますか。このシステムを導入されたお客さまの例なのですが、導入前の売上がこちら、導入後の売上はこれです。」

 応酬話法8.寄添い・質問法

お客さまの発言や断わりの言葉を前向きに受け止め、共感を示して寄り添い、

質問しながら商談を進めることで、お客さまの好感や信頼を勝ち取れる応酬話法です。

 

「もし〇〇であれば・・・いかがでしょうか」

「具体的に教えていただけますか」

「AとBでしたら、どちらがベストでしょうか?」

などのように展開します。

 

まずお客さまの話を聞き、不安や反論を受け止めます。

そして上記のように、いくつかの質問を使って掘り下げることで、断わりの本当の原因を明らかにしていきます。

 

お客さまのために「一緒に考えたい、より良い状態をつくりたい、お手伝いをしたい」という姿勢を示したうえで、

ニーズを再確認します。

 

応酬話法とはいえ、商談が対話型にまとまるので、お客さまからの共感が特に得られる話法です。

ここまでの7つの応酬話法の総合的なものとも言えます。

 

質問は、ただ思いついた質問を根掘り葉掘りするのではなく、

原則として相手の主張や断わりの言葉に沿った質問をします。ここがポイントです。

 

「効果的な質問」を知る必要はありますが、相手の話に関心を持ち「ぜひ課題・問題点を解決したい」

という気持ちを持って聞けば、適切な質問を選択できるようになります。

 

お客さまの望む成果や喜びは何なのかを傾聴し、それに共感を示し、

不安や疑問を解消するためにどうしたらよいか寄り添って考える姿勢を示します。

そうすると、お客さまの中で「そこまで考えてくれるのであれば、実は…」という気持ちが生まれ、

本音を打ち明けてくれるようになります。

 

【応酬話法の例】

お客さま:「新車で買うなら次はこの車、とずっと決めていたんです。でも、納車が半年先ですか…」

営業担当者:「ご関心を寄せていただいて、ありがとうございます。納車までかなりお待たせしてしまうので、それまでの間どうするか、ということが一番ご心配な点ですよね。どのように解決していくか、一緒に考えさせていただいてもよろしいでしょうか。」